帳簿をつける義務は法人なら当然ある
「まだ売上も少ないし、帳簿は後回しでいいかな」と思うかもしれません。でも、法人である以上、会社法と法人税法の両方で帳簿の作成・保存義務があります。規模の大小は関係ありません。
帳簿をきちんとつけておくと、決算申告がスムーズになるだけでなく、「今月は交際費を使いすぎたかな」「役員報酬の設定は妥当かな」といった経営判断にも役立ちます。
ひとり法人の帳簿づけ3ステップ
帳簿と聞くと難しそうですが、やることは大きく3つだけです。
ステップ1:売上を発生ベースで記録する
ひとり法人では、請求書を発行してから入金されるまでにタイムラグがあるケースが多いです。帳簿上は「請求書を出した日」に売上を計上するのが原則(発生主義)なので、入金日ではなく請求日で記録します。
請求書はExcelやPDFで自作するのではなく、マネーフォワード クラウド会計やfreee会計に付属している請求書発行機能を使うのがおすすめです。会計ソフト側で請求書を発行すれば、売上の仕訳が自動で作成されるので、入力の手間も転記ミスもなくなります。どのみち会計ソフトに売上を入力する必要があるなら、最初から会計ソフトの中で請求書を作ってしまうのが合理的です。
法人口座の入出金と帳簿の数字を月に1回照合しておけば、期末にズレを探す手間もなくなります。
ステップ2:経費の領収書を整理する
経費の支払いがあったら、領収書を月ごとに封筒へ分けて保管します。12枚の封筒を用意して、1月~12月と書いておくだけで十分です。カード払いの場合は利用明細も保管しておきましょう。
ひとり法人で多い経費の仕訳例はこちらです。
| 支払い内容 | 勘定科目 | 補足 |
|---|---|---|
| 社長自身への毎月の報酬 | 役員報酬 | 定期同額給与として期首に決定 |
| 健康診断・慶弔費 | 福利厚生費 | 一人法人でも法人契約なら対象 |
| 取引先との飲食 | 交際費 | 1人あたり1万円以下なら会議費でもOK |
| 事務所の家賃 | 地代家賃 | 自宅兼事務所なら法人契約で按分 |
| 携帯電話・ネット回線 | 通信費 | 法人契約に切替えると経費処理が明確 |
| コワーキングスペース利用料 | 地代家賃 | 月額契約の場合 |
経費の支払いはなるべく法人名義のクレジットカードか法人口座からの振込にまとめると、あとで帳簿へ入力するときに漏れが減ります。個人の財布から立て替えた場合は「役員借入金」として処理し、後日法人口座から精算する流れにしておくと、帳簿がきれいに保てます。
ステップ3:会計ソフトに入力する
法人の帳簿は複式簿記が必須です。手書きは現実的ではないので、会計ソフトの利用が前提になります。今は「いつ・何を・いくらで」を入力するだけで、仕訳帳や総勘定元帳を自動で作ってくれます。
主なクラウド会計ソフト(法人プラン)の比較はこちらです。
| ソフト名 | 年額料金(税込) | 特徴 |
|---|---|---|
| マネーフォワード クラウド会計(スモールビジネス) | 年39,336円~ | 銀行口座やカードとの連携が強い。複式簿記の基本を知っていれば迷わず使える |
| freee会計(ミニマムプラン) | 年26,136円~ | UIは洗練されているが、独自の「取引」概念があり慣れるまで時間がかかる |
当事務所ではマネーフォワード クラウド会計をおすすめしています。freee会計は「簿記の知識がなくても使える」とうたっていますが、実際には独自の操作体系(「取引」単位での入力やプラス更新など)を覚える必要があり、かえって混乱しやすいケースが少なくありません。マネーフォワードはUIの洗練度ではfreeeに劣るものの、一般的な複式簿記のルールに沿った入力方式なので、基本的な簿記の知識さえあればすぐに使いこなせます。
なお、最近ではChatGPTやClaudeなどの生成AIに仕訳を聞きながら決算申告を進めることも技術的には可能です。ただし、複式簿記のルールを正しく理解していないとAIの回答が正しいかどうか判断できないため、まずはクラウド会計ソフトで基本を押さえるのが確実です。
帳簿・領収書の保存期間に注意
作成した帳簿や領収書は、決算申告が終わっても捨てられません。法人の場合の保存期間は以下のとおりです。
- 帳簿(仕訳帳・総勘定元帳など) — 7年間(欠損金が発生した事業年度は10年間)
- 領収書・請求書 — 7年間(欠損金が発生した事業年度は10年間)
- 契約書・議事録 — 7年間
たとえば2025年度(2026年3月決算)の帳簿は、申告期限翌日から起算して7年間保管が必要です。欠損金がある場合は10年間に延びます。万が一の税務調査に備えて、すぐ取り出せるように整理しておきましょう。
法人の青色申告で得られるメリット
法人にも青色申告の制度があり、税務署に届け出て承認を受けることで、以下のメリットが得られます。
- 欠損金の繰越控除(10年間) — 赤字が出た年度の損失を、翌年度以降10年にわたって黒字と相殺できます。ひとり法人は設立初年度に赤字が出やすいので、この制度は必ず使いたいところです。
- 欠損金の繰戻還付 — 前年度が黒字で今年度が赤字なら、前年度の法人税の一部を還付してもらえます。
- 少額減価償却資産の特例 — 30万円未満の資産を一括で損金にできます(年間合計300万円まで)。パソコンや備品の購入時に便利です。
青色申告の届出は、法人設立後3ヶ月以内または最初の事業年度終了日のどちらか早い方までに提出する必要があります。設立時に出し忘れると1期目が白色申告になってしまうので、設立と同時に提出しておくのが安全です。
当事務所のサポート
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